「雨音のようにさわさわと蚕が桑を食む」
動物や虫が活発に動きはじめ、生き生きと茂る草木。
畑では夏野菜の花芽が見られます。
爽やかな風が吹き植物が力強さを増す頃、
卵から孵化した蚕が桑の葉をたくさん食べて育ちます。
昔は蚕のえさとして採られた桑の葉ですが、
近年は栄養価が注目され桑茶や桑酒という果実酒の原料としても人気だそうです。
蚕が桑の葉を一斉に食べる音は雨音に例えられ、風情があります。
オカイコサマと呼ばれ貴重な絹糸をとる蚕は
ひと月後には小さなからだの周りに白い糸を吐いて繭をつくります。
目を引く扇の形に、
思いのまま流れるように描いた雲と鳥。
爽やかな風が吹き抜ける清新な朝の空をデザインした器です。
太陽に届きそうなほど空高く舞う雲雀の姿を、
扇の小窓越しにゆったりと眺めている感覚にもなります。
「おおらかな扇の形状」
風を包みこむように受け止めて送り出す、
そんな優しい形にしたいと思いスケッチを描いていきました。
風を生み出す扇のゆったりとした雰囲気を追求し、
粘土で形作ることで温かな揺らぎのある形が完成しました。
つるっとした形状は絵柄も引き立たせてくれます。
「気持ちをのせて書き上げた絵柄」
清風の銅版絵付けの絵柄の原本は筆で描いています。
その時の呼吸によって筆先の表情も変わるため、
同じ絵は二度と描けません。
濃淡や強弱を楽しみながら軽やかに筆を動かしました。
もこもこと楽しげな雲や気持ちよさそうに飛ぶ雲雀。
盛り付けた料理の周りを雲雀が自由に飛びまわり、
雲が棚びくように配置を考えて仕上げました。
「料理を引き立てる色」
グレーがかった釉薬は落ち着きがあり、
料理を一際美味しく見せてくれます。
小さな粒が含まれる釉薬は余白にも動きや美しさを出してくれます。
裏印はすっきりとシンプルに入っていて、
風が吹き抜けような流れのある筆記体がこだわりです。
かりんとうや豆大福、
山菜の天ぷらやお刺身、焼き鳥など
遊び心ある器で食卓に新たな風を吹かせてみてはいかがでしょうか。