今日は、ゆず粉引という器のお話を少し。

ゆず粉引の「ゆず」とは柑橘類のゆずではなく、この器を作っている窯屋さんで飼われている犬の名前から。

だから器の裏には犬をかたどったハンコが施されています。

この器は、たたら成型とういう方法で作られています。

多くの器が、「型」を使って器の形が作られていくのに対し、たたら成型で作る器は、「人の手」で器の形が作られています。

まずは大きな土の塊を、たたら板と呼ばれる板と糸を使って均一な厚さに切り取っていきます。

この均一な厚さで切り取られた土が、器の土台となります。

表面をよく見ると、縦に線が入っているのが見えます。

これは糸を使って切り取っていく時に細かな石が引きずられて出来る溝で、たたら成型ならではの土の表情です。


次に、切り取った土を一枚一枚作る器の大きさに合わせていきます。

これも人の手で、余分な土は丁寧にちぎっていきます。

ゆず粉引の大きな特徴はこのちぎり。あえて人の手でちぎることで輪郭に柔らかさを出しています。

こうして器の大きさに合わせたら、今度は人の手で優しく器の形を作りあげていきます。

写真では少し分かりにくいかもしれませんが、

型の上にタオルを敷き、その上に器を乗せ優しくコテで叩きながら成型していく為、

表面が少し波打ったような面になっているのもゆず粉引の特徴です。

たたら成型は、全ての工程に人の手が加わるのが特徴です。

だから、ちょっとした歪みや反りが一つ一つ異なり、それこそが商品一つ一つの表情になります。


最後に、ちぎった個所は表面がざらつくので仕上げに丁寧にふき取ります。


ここでご紹介した工程は、ゆず粉引を作る工程のほんの一部です。

ここからさらに、もっと多くの工程がこの器を作るうえであり、もっと多くの人の手がこの器に加わっています。


今の時代、もっと簡単に器を作ることも出来ます。

でもあえて、多く工程に人の手を加えて作っているのは、

その方が、商品に表情がうまれ、魅力的な商品を作れるから。

そして、もっと多くの方にゆず粉引を使って欲しい、そんな思いからです。

ゆず粉引には、

デザイナーの「こんな器にしたい」という思いがいっぱい込められています。

手作り感のある柔らかい雰囲気にしたい。

均一な形ではなく一つ一つ微妙に異なる表情を作りたい。

粉引の柔らかくてぽってりした白を表現したい。

土の風合いをいかしたい。

普段の料理が映える器にしたい。


そして、ゆず粉引には、それを具現化する職人の技術がいっぱい込められています。


あとは、みなさんがゆず粉引を毎日の食卓で思う存分使って頂ければ嬉しい限りです。


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